外国人雇用が地方を救う!?岡山・広島の企業の現状と私たちに求められる働き方

近年、日本国内の企業で外国人労働者の受け入れが加速しています。
コンビニエンスストアや飲食店などでも、日常的に外国人スタッフを見かけるようになりました。さらに2019年4月には、これまで原則禁止されていた外国人の「単純労働」とされる分野での就労が正式に受け入れられるようになり、滞在期間も5年から10年に引き延ばされることが決まりました。このことにより、今後ますます外国人労働者の活用が広がっていくことが予想されます。
本記事では、外国人雇用の現状とその背景、メリット・デメリット、これからの日本人に求められる働き方について解説します。

 

目次

1.深刻化する地方の労働力不足と外国人雇用の現状

近年、地方では人口減少に加え、若手労働力の流出により労働力不足が深刻しており、中でも製造業、建設業、介護、宿泊業、飲食店などのサービス業は慢性的な労働力不足に陥っています。また、地場産業、農業・漁業においては、経営者の高齢化や労働力不足から事業継続の断念を余儀なくされるほど、事態は深刻な状況にあります。

そこで政府は、この危機的状況を乗り切るために、新たな労働力として外国人労働者を受け入れるべく、現在、さまざまな施策を行っています。

2018年1月時点、日本国内における外国人労働者は128万人になり、過去最高を記録しました。いまや約50人に1人は外国人労働者が働く時代です。厚生労働省が外国人労働者の増加について調査した結果を見ると、全体人数は前年同期比18.0%増でした。下のグラフからも分かるように、外国人労働者数はここ3~4年で大幅に増加しています。


【引用】内閣府「資料4 外国人労働力について」(平成30年2月)


【引用】厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】」(平成29年10月) 

外国人労働者の内訳を見ると、中国に次いでベトナムからの労働者が多いのが現状です。ベトナム人の労働者は2017年時点で前年同期比約40%増。中国は前年からほぼ横ばいです。

一方で、外国人雇用が進むことで、日本人の就業機会が失われるのではないかということが以前から懸念されています。
しかし、そもそも働くことができる日本人自体が年々減少しているため、今後は外国人労働力に頼らなければ現場は回らない状況にあります。
特に、労働力が不足している業種は、日本人が就きたがらない「3K」(きつい・汚い・危険)と呼ばれる仕事が多く、これらの業界では日本人に代わる労働力として外国人の雇用が加速しています。

このような背景から、日本では国をあげて、即戦力となる外国人人材を幅広く受け入れていく仕組みを構築することが急務とされています。

【参考】厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成28年1月末現在)」(平成29年1月)
【参考】厚生労働省「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成30年1月末現在)」(平成30年1月)

 

2.政府が進める外国人雇用対策

政府は2025年までに、「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」5分野で「50万人超」の外国人の受け入れを目指しています。
これまで外国人は「単純労働」とされる分野での就労は原則禁止されていました。しかし、外国人雇用促進のため、今後は新たな就労資格を設け、単純労働の分野での受け入れが可能になることが決まりました。政府は2019年4月に本格受け入れを目指して準備を進めています。

この新制度は、日本人の就労希望者が少なく慢性的な人手不足に陥っている「建設」「農業」「宿泊」「介護」「造船」の5分野のほか、金属プレスや鋳造など一部の製造業や非製造業の外食産業も対象にする見込みです。また、就労資格を得られるのは最長5年とするが、技能実習生として5年滞在した後、新たな就労資格を得れば、10年にわたって滞在できるようになります。

これまでは滞在期間の短さから、外国人労働者が知識や技能を身に着け、ようやく戦力になった頃に帰国しなければならず、企業は新たに雇用した外国人労働者にまた一から教育しなければならないという問題が発生していました。しかし、新制度の導入により、企業は外国人労働者の長期雇用が実質的に可能になり、技術やノウハウの教育に力を入れられるようになります。
また、政府は日本の大学を卒業した「高度人材」の就職も後押ししていく方針です。

その他にも、厚生労働省は外国人雇用促進のために次のような施策を行っています。

・外国人就労・定着支援研修
日本語コミュニケーション能力の向上、日本の労働法令、雇用慣行、労働・社会保険制度等に関する知識の修得に係る講義・実習を内容とした研修を実施

・職業訓練
日本語能力に配慮した訓練機会の確保を推進

・留学生の国内就職支援
就職ガイダンス、インターンシップ、就職面接会、職業相談・職業紹介等

・入国在留管理庁の設置(2019年4月予定)
外国人労働者を受け入れるための新たな在留資格を設けるにあたり、「入国在留管理庁」を設置し、入国審査官・入国警備官を約300人増員する。これにより、不法滞在やテロリストの入国を防ぐ。また、受け入れ企業や自治体と連携して外国人労働者の雇用状況を把握し、在留支援なども行う。

【参考】厚生労働省「外国人雇用対策 Employment Policy for Foreign Workers」
【参考】毎日新聞「法務省 入国在留管理庁を新設へ 外国人労働者増見据え」(平成30年8月28日)

 

3.外国人雇用のメリット・デメリット

外国人雇用が促進されることで、企業にはどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。

メリット

・若く労働意欲の高い人材を補充できる
・人件費が抑えられる
・社内環境の活性化につながる
・グローバル化に対応できる
・異なる視点からの発想、新しいアイデアが得られる

外国人労働者には働く意欲や向上心の高い人材が多い傾向にあります。また、日本人とは異なる視点や価値観を持ち合わせています。このような人材が組織に加わることで、周りの社員へ良い影響と刺激を与えてくれることが期待されます。

デメリット

・文化や習慣、労働に対する考え方の違いが発生する
・雇用に際し、手続きに労力と時間がかかる
・外国人の受け入れに対応するため、社内体制を整備する必要がある
・言語の違いからコミュニケーション不足になりやすい
・外国人労働者が孤立しやすい

外国人労働者と働くうえで大きな壁となるのが「言語と文化の違い」です。このことが原因で、外国人労働者が孤立したり、日本人社員とトラブルになることが多いです。また、会社としても、外国人を受け入れるためには様々な手続きや社内環境の整備が必要となります。

 

4.岡山県・広島県の外国人雇用の現状

外国人雇用は、都心部より地方で増加していると前述しましたが、岡山県・広島県はどのような現状なのでしょうか。
各県の経済の特色と外国人雇用の状況を解説します。

岡山県の場合

<経済の特色>
岡山県には製鉄、鉄鋼、機械加工、自動車工場などの製造業関連の高度な技術力を有する企業が集積しています。デニムの国内生産や学生服の出荷数が多く、日本を代表する素材、繊維(縫製や紡績)、バイオ、石油精製などの化学工業系の企業も多く存在します。

<外国人雇用の現状>
・外国人雇用を行う企業は製造業が約4割
・企業事業所規模は30人未満が約5割
・ベトナム・インドネシア・フィリピンの技能実習が年々増加

【参考】岡山労働局「「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(平成29年10月末現在)」(平成30年1月)

広島県の場合

<経済の特色>
広島県は、中国・四国地方の中で労働力人口は第1位を誇ります。(2014年総務省調査より)また、工業製品の出荷額は西日本(中国・四国・九州地方)で6年連続1位になるなど工業が盛ん。製鉄、鉄鋼、機械加工、自動車工場などの製造業関連の高度な技術力を有する企業が集積しています。

<外国人雇用の現状>
・外国人雇用を行う企業は製造業が約4割
・企業事業所規模は30人未満が約6割
・ベトナム、フィリピンの技能実習が年々増加

【参考】広島労働局「「外国人雇用状況」の届出状況 (平成29年10月末現在)」(平成30年1月)

中国地方5県の労働局の調査によると、中国地方全体で見ると、外国人労働者の増加は広島県が最多約2万8千人(前年同期比15.3%)、次いで岡山が約1万4千人(同21.7%)という結果となりました。
その他の雇用状況については下記の通りです。

・岡山・広島ともに中国・ベトナムからの労働者が全体の約2/3を占めている。
・在留資格は技能実習が最も多く、全体の約1/2を占めている。
・業種は製造業がトップ。従業員が少ない企業ほど外国人雇用を行っている。
・中国人の労働者数は横ばいもしくは減少。平成27年以降ベトナムからの労働者が大幅に増加。

【参考】日本経済新聞 電子版「中国5県、外国人労働者急増 4県で2ケタ増 17年10月末」(平成30年2月3日)

 

5.外国人と働くうえで日本人労働者に求められること

これからますます加速すると予想される外国人雇用ですが、外国人労働者が増えることで、私たち日本人労働者に求められる能力も変化していきます。外国人労働者と良い関係を築き、成果を上げていくために必要となるのはどのような能力でしょうか。

(1)文化・価値観の違いを理解する

言語も文化も異なる環境で育った外国人と上手く仕事をしていくうえで最も重要なことは、「文化や価値観の違いを理解する」ことです。生活、食事、信仰、仕事の価値観などは各人の生まれ育った環境により異なり、日本で暮らす私たちには理解し難いことも出てくる可能性があります。そのようなときは相手を否定するのではなく、相手の考えや意見に耳を傾け、双方にとって良い解決方法を取れるように工夫しましょう。

(2)コミュニケーション力を高める

(1)のために必要なのが「コミュニケーション力」です。外国人労働者のすべてが日本語を流暢に話せたり、正確な意味を理解できるわけではありません。そのため、外国人労働者は日本人と意思疎通が図れないことから同じ外国人としか交流を持たなかったり、組織やチームから孤立しやすい傾向があります。このような状況は、業務を遂行するうえでトラブルが発生しやすく、チームの人間関係も悪化していく可能性があります。
受け入れ側の私たちにできることは、日本語にこだわらないコミュニケーションを取ることです。外国人労働者の多くは英語を習得しているため、日本の高校レベルの英語であれば大体の意味は通じます。英語が話せない場合は翻訳ソフトを活用するのも良いでしょう。また、業務マニュアルは英語表記を追加しておくとスムーズに業務が進みます。言語が違うからと苦手意識を持たずに、様々な方法を用いてコミュニケーションを取りましょう。

その他にも、グローバルな視点で物事を考えられる人材、他国の言語能力に長けた人材、異なる国籍のメンバーをまとめて業務を遂行できるマネジメント力を持った人材なども、今後は企業で働くうえで重宝されることになるでしょう。もし、外国人雇用を行っている企業に転職を考えている人は、これらの点を意識して転職活動を進めましょう。

 

6.まとめ

外国人労働者は、これからの日本経済を支える重要な存在として欠かせない存在となっていくことが予想されます。私たち日本人は、外国人労働者とWin-Winの関係を築くために、彼らに対する理解を深め、彼らが働きやすい職場環境と人間関係を作っていかなればなりません。企業が受け入れ体制を整備することはもちろんですが、労働者が個人として取り組めることもたくさんあります。私たちも、この加速する外国人雇用の現状に対応し、変化する労働環境の中で生き残っていくために自身のスキルを伸ばしていきましょう。

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