日本の人材不足をAIが救う?!加速するAI人材争奪と地方企業のこれから

少子高齢化により労働人口の減少が加速する今後の日本において、いま、多くの企業がAIの導入に注目しています。AI導入は「労働時間の減少」や「業務効率の向上」につながることから、人材不足が深刻化している地方企業においても、AIの需要が高まっていくことが予想されます。
本記事では、AI業界の現状をはじめ、これからの時代に私たちに求められるスキル、地方でAI人材として活躍するための方法について解説していきます。

 

目次

1.労働力不足を補うAI技術

これから日本が直面する「2025年問題」。現在800万人存在するという団塊の世代が後期高齢者の年齢を迎え、国民の3人に1人が65歳以上となる時代がやってきます。さらに、加速する少子化の影響で日本の人口は約700万人減少。15歳から64歳の生産年齢人口が7000万人まで落ち込むと予測されています。
このような状況から、2025年問題に備えるため、企業はAI導入により業務効率や生産性を高め、不足している労働力を補完することが求められています。

 

2.AIの活用事例

具体的に、AI導入によって企業にどのような変化がもたらされるのでしょうか?
日本でもすでに一部の企業ではAIが導入され、業務効率化や生産性向上の成果を上げています。
ここではいくつか事例をご紹介します。

(1)物流倉庫での需要予測、仕分け、検品、トラックへの積み込み、配車計画等

AIにより商品の需要を予測することで、倉庫の荷物を最適に管理・発送できるようになります。また、運送実績を機械学習させることで配送・配車計画を自動作成することも可能です。倉庫内業務では、保管された指定した商品をロボットが運んできたり、荷物の仕分け、検品、トラックへの積み込みまでを正確に行うことが可能です。

(2)コールセンターのアシスト、自動対応、情報分析等

オペレーターのアシストを行います。顧客との対話内容からマニュアル、回答例をモニターに表示させることで、新人でもベテランに近い仕事ができるようになります。また、自動チャットや自動音声対応、顧客へのヒアリング内容のテキスト化、音声分析レポート作成など、AIが自動で行うことで業務効率化を図ることができます。

(3)画像認識機能によるレジ装置

ソフトウェア会社「ブレイン」が開発したレジ装置が話題を呼んでいます。その内容は、複数のパンをトレーに並べてレジのカメラでスキャンすると、パンの種類や個数を判別して購入金額を算出するというもの。一つ一つバーコードを読み込まなくても良いこと、商品知識が無くてもレジ対応ができることから、業務効率化と人材不足の解消を実現できます。

(4)クラウド型の顧客おもてなしサービス

店舗にロボット型デバイスを設置することにより、デバイスや各種センサーが収集したビッグデータを管理・分析します。例えば、顔認識による顧客個別認識機能により、来店回数に応じたサービスを提供したり、過去のサービス利用実績から顧客に最適なサービスの提案を行います。また、顧客と自然言語での会話や接客、注文、決済、センサーを活用した来店・退店確認などを行うことも可能です。

(5)クラウド型の営業支援システム

AI機能を搭載したSFAサービスで、マーケティング、インサイドセールス、クロージングまでの流れを効率化します。SFAとは「Sales Force Automation」の略で、営業の業務を自動化できるシステムのことです。これまでは、営業職の感覚に頼っていた営業活動における意思決定や判断の部分を、AIが顧客の問い合わせ・商談記録、社員の日報・メール、インターネット上の情報などの各種データをもとに分析し、営業職に最適な行動を提案します。

 

3.AI普及で仕事がなくなる?これから人間に求められるスキルとは

AIの普及により、日本の労働環境は大きく変化すると言われています。これまで、人間が一から頭で考え、手作業で行っていたことを、今後はAIが的確に正確に判断し、形にしてくれる時代がやってくるのです。想像しただけでもすごいことですよね。

そこで懸念されているのが、「AIが普及すると人間の働く場や一部の職種がなくなるのでは?」という問題です。一部では失業者が増えることを指摘している専門家もいます。

しかし、AI技術がいくら進歩しても、AIはあくまで「道具」です。「道具」には必ず「使う人」が必要です。使う人の良し悪しで、AIの機能を十分に発揮できるかどうかが変わります。AIを導入したからといって、それだけでは企業の課題解決にはつながらないのです。このことからも、AIは人間にとって仕事を奪う「脅威」ではなく、人間と「共存」していくものと考えられます。

実際に、人間にしかできないことはたくさんあります。特に複雑な表現を交えたコミュニケーションや、0から1を作り出すクリエイティブな発想は、現状のAI技術では実現できていません。私たちがこれからのAI時代を生き残るためには、この「コミュニケーション力」「クリエイティブ力」を磨いていくことが必要と言えるでしょう。

 

4.AI普及の課題~2030年には60万人のAI人材不足~

世界的にAI技術が進歩する反面、AIを開発・運用するための人材が大きく不足しています。
中国IT大手テンセントと、求人サイト「BOSS」が共同で発表した「2017グローバル人工知能人材白書」によると、現在、世界の企業が必要としているAI人材は約100万人と言われており、これに対し実際に活動している専門人材は30万人しかいないとされています。また、日本国内の話をすると、内閣府はAI人材を含むIT人材について、2020年に30万人、30年には60万人が不足すると試算しています。

AI人材がこのように不足している原因として、AI人材を育成できる環境が不足していることが挙げられます。AI人材を育成するにあたり、関連する研究機能を備えた教育機関は世界に約370ほど存在し、そこから輩出できる人材は年2万人と言われています。そのうち日本国内において輩出されるAI人材は、年間約3,000人にとどまっています。そのため、政府はAIを開発する先端IT人材を年間2万~3万人、AIを活用する一般のIT人材を毎年15万人、現行施策に追加して育成することが急務だとし、様々な施策を始めています。

<施策の一部>
・民間の教育訓練講座を国が認定
・情報処理推進機構の「ITパスポート試験」受験者を6倍に増加
・教育検定ビジネスの拡大 等

【参考】テンセント・リサーチ・インスティテュート「2017グローバル人工知能人材白書」(平成29年12月)
【参考】内閣府「人工知能技術戦略会議の検討状況 」(平成30年4月)

 

5.地方企業でAI人材として活躍することは可能?

現時点では、AI導入は大手企業の話と思われるかもしれません。しかし、地方の労働力不足は年々深刻化していることもあり、それを補うために今後は中小企業でも導入の流れが広がっていくことが予想されます。そして、それに伴いAI人材は地方企業においても需要が高まっていくと考えられます。

AI人材と聞くと、「AI分野で企業に求められているのはシステムエンジニアやプログラマーだけじゃないの?」「AI人材が活躍できるのは都市圏だけじゃないの?」と考える人も多いのではないでしょうか?

しかし、実際はそのようなことはありません。
AIを「作る人」と「使いこなす人」は違います。AIを作るエンジニアやプログラマーになるためには専門知識の勉強が必要となり、職場においても高度な技術力と経験が重視されますが、それ以外にもAIを活用するために戦略を立てる人、保守・運用する人、AI技術を顧客に商品として販売する人など、様々な職能を持った人材が関わる必要があります。

AIに関わる職種には次のようなものがあります。

<職種の例>
・AIエンジニア
・AI営業
・AIアナリスト
・AIマーケッター
・AIコンサルタント
・AI総合職 等

例えば、営業職もAI分野において活躍の場がたくさんあります。営業のヒアリング力、課題分析力、提案力、交渉力、折衝力などは、AIという新たな技術を地方企業に普及させるために不可欠であると考えられます。

また、AIが収集した膨大なデータを有効に利用するためには、マーケッターやコンサルタントの力も必要となります。

「これからAI分野で活躍したい!」という人は、AIに関する知識を身につけ、自身の経験・技術と合わせることで、職場における活躍の場がぐんと広がると言えるでしょう。

 

6.まとめ

労働人口が年々減少する日本において、今後AIは人間に変わる労働力として欠かせないものとなります。
しかし、地方ではITやAIに関わる人材自体が少なく、AI導入を考える企業は人材確保に苦戦することになるでしょう。人材確保の手段としては、AIに関する学部を専攻している学生や関連プロジェクトやインターンの経験があるスキルの高い学生を採用するか、中途採用で数少ないIT・AI人材を確保するしかないという状況になることが予想されます。

しかし、本記事でお伝えしたように、これからAI業界で活躍したいと考えるのであれば、AI開発の分野だけでなく様々な方面からの関わりが可能です。AIの知識を身につけ、自身の経験や技術と結びつけることで、あなただけの強みを作ることができます。

地方でAI人材の需要が高まっていくのはもう少し先になるかもしれませんが、この流れをチャンスと捉え、これを機に新しいチャレンジをしてみてはいかがでしょうか?

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