今話題の「リカレント教育」とは?大人の学び直しで生涯現役時代を豊かに生きよう

いま、リカレント教育が日本で注目されています。
リカレント教育とは「社会人の学び直し」とも言われ、本人の希望により、年齢や時期に関わらず生涯を通して学ぶことができるという考え方です。
本記事では、リカレント教育が注目されている背景や現状、メリット・デメリット、普及に向けた課題についてお伝えします。

1.リカレント教育推進の背景

日本では義務教育が終わると、多くの人が進学や就職を選択します。そして一度社会に出ると、仕事に必要な知識や技術は企業内教育を通じて身に着けていくというやり方が一般的であり、教育機関に戻って教育を受ける機会はあまりありません。

日本でこれまでリカレント教育が普及しなかった理由に、近年まで日本は終身雇用が主流で、新卒から定年までのキャリアだけを考えていればよかったという状況があります。また、仕事に必要な教育は就職した企業内で教育が受けられるという前提があったため、わざわざ学び直しをする必要性を感じなかったということが考えられます。それ以外にも、教育を受けるために一度退職してしまうことで「ブランク」が発生するという意識が強く、再就職に対する不安から学び直しへの挑戦に踏み切れない人も多く存在します。

しかし、日本はいま、国の未来を揺るがす大きな2つの問題に直面しています。
リカレント教育はそれらの問題を解決するためのカギとして注目されており、政府は推進を急いでいます。

(1)超高齢化社会の影響

日本は「人生100年時代」とも言われる超高齢化社会に突入しました。厚生労働省の調査によると、2017年の日本人の平均寿命は女性が87.26歳、男性が81.09歳と、過去最高を更新しました。世界的に見ても日本人の平均寿命は常に上位にあり、女性は世界2位、男性は3位という状況です。また、2050年には女性の平均寿命は90歳、男性は84歳を超える見通しです。このように長寿化する社会を見据えて、何歳になっても学び直しを行うことの重要性は、政府が主導する「人づくり革命」でも指摘されています。

その理由として、長寿化に伴い就業期間も長期化することが見込まれることが挙げられます。内閣府が35~64歳の男女を対象に、60歳以降の就労希望年齢を調査したところ、「65歳を超えて働きたい」と回答した人は約5割を占め、そのうち「70歳くらいまで」と回答した人が20.9%、「働けるうちはいつまでも」と回答した人は25.7%という結果となりました。

このように定年退職後も働き続けることを考えると、若いうちから転職や起業なども視野に入れた長期的なキャリア形成を行い、それに応じたリカレント教育を受けることが望ましいと考えられます。

(参考)職業安定分科会雇用保険部会(第104回)「高年齢者雇用の現状について」,平成27年9月

(2)働き方・生き方の多様化

女性の社会進出、非正規雇用者の増加により、働き方や生き方が多様化していることも、リカレント教育が注目される理由の一つとなっています。出産・育児、介護など、様々な理由で正社員として働けない人たちは、企業内教育のみで仕事に必要な知識や技術を身に着けることが難しいのが現状です。そのため、自らのキャリアパスに合わせて自ら学習機会を作ることが求められますが、家庭と仕事と学習を両立させるのは並大抵のことではありません。そこで、国としてリカレント教育を受けやすい仕組みを作ることで、家庭や仕事と両立しながら学びの場を確保できるようになることが期待されます。

 

2.リカレント教育を受けるメリット

リカレント教育を受けた場合、受けない場合ではどのような違いがあるのでしょうか。ここではそのメリットをご紹介します。

<メリット>
・年収の増加
・就業確率が上がる
・専門性の高い職業へキャリアアップ
・心の豊かさや生きがいにつながる

内閣府の調査によると、30歳以上の男女を対象に自己啓発を行った人と行わなかった人が、1~3年後に両者にどの程度の差が生じているかを分析したところ、次のような結果が出ました。

【出典】内閣府「平成30年度 年次経済財政報告 第2章 人生100年時代の人材と働き方」(平成30年8月)

  • 年収
    1年後には有意な差は見られませんが、2年後では約10万円、3年後では約16万円と増加し、それぞれ有意な差が見られています。
  • 就業確率
    非就業者が自己啓発を実施すると、就職できる確率が10~14%ポイント程度増加するという結果が出ました。

これらの結果からも、リカレント教育を受けることは、これからの長い人生において大きなメリットが得られることが分かります。

 

3.学び直しの手段と平均的な時間・費用

実際に学び直しを考える場合、一体どのくらいの費用がかかるのでしょうか。
学び直しの手段は様々ですが、働きながら学ぶ場合の一般的な学習方法と、それにかかる平均的な金額をご紹介します。

【出典】内閣府「平成30年度 年次経済財政報告 第2章 人生100年時代の人材と働き方」(平成30年8月)

(1)通学(大学・大学院、専門学校、公共職業訓練等)

<1ヶ月> 48時間/6万円程度

(2)通信講座(通信制大学を含む)の受講

<1ヶ月> 21時間/2万円程度

(3)その他(書籍での学習、講演会・セミナー、社内の勉強会等)

<1ヶ月> 15時間/1万円程度

一部の専門分野の教育は教育機関での学習が必要となりますが、それを受けるためには多くの時間と費用が掛かることが分かります。

 

4.リカレント教育の普及に向けた課題

前項で述べたように、将来的に見るとメリットが大きいリカレント教育ですが、なぜ日本ではなかなか普及しないのでしょうか?

(1)時間の問題

働きながら学校に通う場合、その時間をどう確保するかが課題となります。内閣府の調査によると、7割強の労働者が学び直しを行うことに問題を抱えていると回答しました。その中で最も多い回答が「仕事が忙しくて学び直しの余裕がない」という問題です。また、働き方の多様化や家事・育児・介護などの負担により、学びたいと思っていてもその時間を確保することが難しい人も多いです。
このことからも、時間の確保は企業や家庭からリカレント教育への理解を得られるかどうかが大きなカギとなります。

(2)お金の問題

リカレント教育を受けるためにはお金が必要です。生活費とは別に教育資金を確保できれば良いですが、実際は生活するので精一杯という世帯が多いのが現状です。日本では行政からの支援や給付金が少なく、学習を希望する本人の負担が大きいため、経済的な問題で教育が受けられないケースも多いです。

(3)教育機関とプログラムが少ないという問題

教育機関で学び直したい場合、リカレント教育のプログラムがある教育機関が少ないという問題があります。多くのプログラムは大都市圏で開講されており、地域的な偏りがあります。受けたい分野を扱う学校が近くにない場合は、教育を受けること自体が難しくなります。

リカレント教育が行われている大学の取り組み事例
・日本女子大学
【概要】
出産等のライフイベントで離職した女性へのキャリア教育を通して、高い技能・知識と働く自信・責任感を養い、再就職までを一貫してを支援。

・岩手大学
【概要】
経営感覚・企業家マインドを持って経営革新、地域農業の確立に取り組む先進的な農業経営者等を養成。

・大阪大学
【概要】
ナノ科学技術分野に従事、または将来の従事を志す企業の研究者・技術者を対象とする大学院レベル9単位分のプログラムで、ナノ分野の最先端高度知識を基礎から学び、ナノ科学技術を生かした新産業を自ら切り開く知識と挑戦力を養成。

・山口大学
【概要】
インフラの点検・診断を実施する能力を備え、インフラ再生に関する俯瞰的な技術力を持つ中核的技術 者の養成を目指し、橋梁・トンネルを対象とした座学と実習。

・大阪府立大学
【概要】
基礎知識を学ぶ座学から、実習、ビジネスプラン演習を経て、生物学・生理学・育成学・工学など多くの科学技術の融合で成り立っている植物工場を管理・運営する人材を育成。

など

最近では、誰でも通いやすいように、週末の開講,長期休暇期間における集中開講,IT活用,補講の実施,託児サービスの実施等が工夫されています。

(4)企業に支援制度が無いという問題

リカレント教育促進のためには、企業の理解が不可欠です。せっかく学び直しても、その成果を企業が評価してくれなければ、学び直しの必要性は無くなってしまいます。現状として、リカレント教育に理解のある企業はそれほど多くありません。
首相官邸が発表した資料によると、自社の従業員が大学等で学ぶことを認めているかという点については、「原則認めている」と「原則認めていない」が拮抗しており、次いで「上司の許可があれば認めている」という順となっています。企業が従業員の大学等での就学を認めていない理由には、「本業に支障をきたすため」「教育内容が実践的ではなく現在の業務に生かせないため」が挙げられています。
これらの問題から、学び直しを行う社会人の多くは、自主学習や社内外の勉強会、研究会、セミナーへの参加、通信教育など、少ない時間と費用で実施可能な勉強を行っているケースが多いです。

ちなみに海外、特にヨーロッパではリカレント教育が当たり前に行われています。2017年に行われたOECDの調査によると、4年生大学への25歳以上の入学者割合を見ると、日本は他国と比較して割合が著しく低い結果となりました。
ヨーロッパの一部の国では、一度社会に出た人も必要に応じて教育を受け、生涯を通して学ぶことができるシステムが立法化しています。具体的には、有給教育訓練制度の保障と労働時間が短く、教育を受けるという目的であれば一定期間職場を離れることが認められていたり、日本と比べて一日当たりの労働時間が短いため、就業時間外に教育に充てられる時間が取りやすいという仕組みが確立しています。

【出典】内閣官房人生100年時代構想推進室「リカレント教育 参考資料」(平成30年3月)

 

5.リカレント教育の普及に向けた政府の施策

現在、政府によりリカレント教育関連の法整備や施策が進められています。

・教育訓練給付金の対象の拡大
・企業と教育機関の連携による講座創設
・T技術者などの新しい国家資格とそのための教育プログラムの創設
・オンラインの単位取得講座の増設・拡充
・企業等の理解の促進
・職業教育のための「専門職大学」「専門職短期大学」の設置 など

また、出産や育児で仕事を離れた女性の復職支援として、一度キャリアが途切れた女性が良い待遇で復職できるよう学び直しを支援し、企業の再雇用の制度を広げています。具体的な施策としては、文部科学省では「職業実践力育成プログラム」を実施する大学に対し、従来の半分となる60時間で履修できる講座の開設を求めています。(平成30年度中)これにより、家事や育児で時間取れない女性も受講しやすくなることが期待されます。厚生労働省では「教育訓練給付金」の受給期間を最長20年まで延長しました。また、国家資格の要請過程などのキャリアアップを見込める講座は、給付率を2割から4割に上げる方針で進めています。

【参考】文部科学省「制度・教育改革ワーキンググループ(第3回)配付資料 資料2 社会人の学び直しの更なる推進に向けて」(平成29年8月)
【参考】日本経済新聞 電子版「女性の復職しやすく 国・企業、動き出した支援策」(平成30年8月30日)

 

6.まとめ

リカレント教育は定年後も生涯現役でいるためだけでなく、私たちが人生をより豊かに生きがいを持って生きるためにも重要なものです。これから普及に向けて、国の支援がますます充実していくことが予想されますが、実際は国だけでなく企業側の理解とサポートが必要不可欠です。現状から考えると、リカレント教育という考え方やシステムが企業に浸透するまでには、残念ながらもうしばらく時間がかかるでしょう。
しかし、現状でも個人のやる気さえあれば、教育機関でなくても学ぶチャンスは多数あります。例えば、岡山県や広島県にも、様々な団体や有志が主催する勉強会や研修がありますし、通信講座、オンライン講座、書籍で学ぶことも可能です。これからの長い人生を充実させるために、自身の今後のキャリアをいま一度見つめ直し、必要な勉強を始めてみてはいかがでしょうか?

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