テレワークで働き方はどう変わる?メリット・デメリットと向いている職種は?

いま、国をあげてテレワークの推進活動が行われています。昨年より、働き方改革の国民運動として「テレワーク・デイズ」が実施され、2018年は全国の企業や自治体約1500社がテレワーク普及に向けた取り組みを行いました。一方で、「テレワークって『在宅ワーク』のことでしょ?」という人や、言葉自体は耳にしたことがあっても、内容がよく分からないという人も多いのではないでしょうか。
本記事ではテレワーク推進の背景、テレワークの種類と向いている人、メリット・デメリット、岡山・広島の導入事例などを紹介します。

 

目次

1.テレワークがいま注目される理由とは?

テレワークとは「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のことです。近年、スマートフォンやタブレット端末の発達、通信サービスの品質向上、セキュリティ保護技術の向上により、テレワークが実現できる環境が整ってきたこともあり、テレワークを導入する企業が増えてきています。

テレワークが推進されるようになった背景には、少子高齢化による労働力不足の問題があります。特に地方の中小企業の人材争奪戦は激化しており、企業は生き残りをかけて優秀人材の確保、生産性の向上を図るため、労働者の働きやすい環境を整備することが重要課題となっています。

その解決策として注目されているのが、育児・介護などの家庭の事情、身体障がいなど様々な制約があり、現在正社員として働けない立場にある人材の活用です。働くにあたり制約がある人でも、テレワークを導入することで、個々のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を実現することができます。

テレワークの性質上、適用できるのは一部の職種だけですが、通勤時間や業務中の移動時間が削減されることで時間を有効に使えるようになり、業務効率化・生産性向上・ワークライフバランスの実現につながることが期待されます。

 

2.テレワークの種類は?どんな人に向いている?

テレワークにはどのような勤務形態があるのでしょうか。また、業種・職種によって向き不向きはあるのでしょうか。

(1)テレワークの種類

1.在宅勤務

自宅を就業場所とします。通勤が無くなることで時間を有効活用することができます。在宅勤務は、毎日自宅で業務を行う形態以外に、週に何日かは会社へ出勤するという形態もあります。会議への参加は、テレビ会議・Web会議などのシステムを利用して実施します。
育児・介護を行う人や障がい等で通勤が困難な人も、本人のライフスタイルに合わせた働き方ができるため、キャリアの継続が可能です。

2.モバイルワーク

移動中(公共交通機関・車等)や顧客先、カフェなどを就業場所とします。営業職など頻繁に社外に出る職種に向いています。

3.サテライトオフィス勤務

勤務先以外の他のオフィス(専用型オフィス、他社との共用型オフィス、レンタルスペース等)を就業場所とします。営業活動等で社外に出ているときに最寄のオフィスを利用する、自宅から近いオフィスを利用することで、通勤・移動時間を削減できます。
専用型オフィスはネットワーク環境、セキュリティ環境が整備されているため、機密情報や個人情報を扱う場合でも安全に作業ができます。共用型オフィスやレンタルスペースの形態は様々で、働き方に応じて選ぶことができます。料金は月額利用とスポット利用が選べたり、作業スペースは共用だけでなく、個室が完備されているオフィスもあります。

(2)テレワークに向いている人・職種

テレワークは基本的に、一人でもできる業務、就業場所を選ばない業務、セキュリティ管理ができる業務の場合に向いていると言えます。逆に、製造業、飲食・販売などのサービス業、医療・福祉業などの現場でしかできない仕事は、テレワークには不向きとされています。

1.在宅勤務の場合

SE・プログラマー・デザイナー・ライター・マーケッターなどの専門職や、企画、研究、総務、経理など、個人ワーク中心の職種に向いています。

2.モバイルワークの場合

営業職など外出・移動が多い職種に向いています。

3.サテライトオフィス勤務の場合

在宅勤務同様、個人ワーク中心の職種、営業職など外出・移動が多い職種に向いています。

 

3.テレワーク導入のメリット・デメリット

テレワークを導入することで、労働者・企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

労働者のメリット

・出産・育児・介護を続けながら働ける
・通勤や移動時間や負担が減る
・営業中に空いた時間を有効に使える
・在宅ワークの場合、自由な服装で仕事ができる
・コストを削減できる(食事・衣類・交通費等)

労働者のデメリット

・長時間労働になる可能性がある
・コミュニケーションが不足する
・モチベーションや集中力の維持が難しい

企業のメリット

・優秀な人材の確保、離職防止につながる
・非常災害などによるリスクを分散できる
・交通費やオフィスコストを削減できる
・労働者の生産性が向上する
・企業イメージの向上

企業のデメリット

・業務の状況が見えにくい
・情報漏洩リスクが高い
・コミュニケーションが不足する
・人事評価・人材育成が難しい
・任せられる業務内容が限られる

労働者の最大のメリットは「ワークライフバランスが実現できる」ことです。特に在宅ワークの場合、通勤にかかっていた時間をそのまま家族との時間、自分の時間に充てることができます。また、通勤時間の問題で時短勤務にしていた人もフルタイムで働くことが可能となります。

企業のメリットとしては、人材確保がしやすくなるという点があります。決められた勤務体系でしか雇用しない場合、その条件に合う人材しか採用できませんが、テレワークなら個々の希望に合わせた働き方ができるため、より能力の高い人材を採用しやすくなります。また、結婚・出産・育児・介護などでライフスタイルが変わった場合でも、それに合わせて勤務体系の変更ができるため、離職防止にもつながります。それ以外にも、震災や感染症流行などが発生した場合に、オフィスと従業員が1ヶ所に集中しないため、重要業務を中断するリスクを分散できるというメリットがあります。

しかし、上に挙げたように、対面できないからこそ起こり得るデメリットもたくさんあります。また、メリットとデメリットは企業の規模や事業内容によっても異なります。

 

4.テレワーク導入の課題

国をあげて推進活動が行われているテレワークですが、現状ではまだ一部の企業でしか導入が認められていません。導入のためには、企業がクリアしなければならない課題がいくつもあり、解決には多くの労力・時間・費用がかかることから、なかなか踏み切れないでいるケースが多いようです。また、テレワークで働くことを希望する労働者自身もクリアすべき課題があります。

企業の課題

・運用ルールの制定
・環境整備(ネットワーク・セキュリティ・使用端末等)
・勤怠管理(出退勤、業務時間の管理)
・部下のマネジメント
・人材育成、人事評価

労働者の課題

・勤務時間の管理
・モチベーションの維持
・仕事とプライベートの区別

企業はまず、運用ルールを作る必要があります。また、社外で業務を行うためのネットワーク環境、セキュリティ環境、使用端末の準備など、労働環境を整備しなければなりません。それ以外にも、目に見えない環境で働く労働者の業務時間の管理をどうするのか、人材育成・人事評価は誰がどのように行うのかということも考えなければなりません。

労働者は「いかにして自らをマネジメントするか」が課題となります。基本的に一人で作業することになるため、高い自己管理能力が求められます。逆に、一人ではモチベーションや集中力が維持できなかったり、誰かが見ていないと甘えが出てしまう人にはテレワークは向いていないと言えます。

 

5.岡山・広島のテレワーク導入事例

地方ではまだ馴染みのないテレワークですが、岡山・広島でも取り組みを始めている企業があります。
その企業を何社かご紹介します。

岡山県

株式会社WORK SMILE LABO(旧 株式会社石井事務機センター)<在宅勤務・サテライトオフィスの設置>

事務機器販売業から「笑顔溢れるワークスタイルの創造提案業」へと転換し、快適なオフィス環境の提案から経営課題の解決にいたるまで、誰もが笑顔で働ける企業づくりのサポートを行っています。「子育て真っ最中の女性の活用」を課題に、中小企業としてはいち早くテレワークに取り組み、業務効率化による生産性向上を実現しました。
現在は全社員を対象にテレワークを導入するほか、岡山駅前に中小企業が共有して利用できるサテライトオフィスを設立し、中小企業の新しい働き方の提案を行っています。「平成28年度テレワーク先駆者百選」に選ばれました。

株式会社WORK SMILE LABO ホームページ

株式会社ありがとうファーム<在宅勤務>

就労継続支援A型事業所として、障がい者の一般就労に向けて職業訓練をする施設を運営しています。一般的には、障がい者の就労は施設内で行われますが、こちらの施設では在宅勤務での雇用も行っています。障がいを持つ人たちが、個々の能力を生かして芸術やサービスの提供を行い、楽しみながら働ける場所を作ることで、障がい者の自立支援と社会貢献を行っています。「平成28年度テレワーク先駆者百選」に選ばれました。

株式会社ありがとうファーム ホームページ

株式会社Orb<在宅勤務>

岡山発の衣料や食品、家具を取り揃えたサイトや化粧品や機能性食品、雑貨などの商品を扱うサイトなどのeコマース事業を展開しています。在宅勤務を積極的に取り入れ、ホームワーカーは運営中のECサイトのデータ作成やサイト制作を行っています。また、テレワークを通じてキャリアの継続、スキルアップを推進しています。「平成29年度テレワーク先駆者百選」に選ばれました。

株式会社Orb ホームページ

株式会社まちづくり新庄村<コワーキングスペースの設置・仕事斡旋>

岡山県の県北に位置する新庄村は、テレワーク推進の一環として「コワーキングスペース」を設置しています。田舎暮らしをしたい、自然に囲まれて子育てをしたいという若い世代の移住・定住促進のため、自宅や拠点施設で仲介業者を通じて受託した企業のデータ入力やWebデザイン、プログラミングといった仕事を紹介したり、業務に必要な知識や技術を学ぶ研修会を開催しています。

株式会社まちづくり新庄村 ホームページ

広島県

広島県庁<在宅勤務・サテライトオフィスの設置>

職員に「どこでもワーク」を推進しています。ICTを活用したワークスタイルとして、Web会議システムの導入、専用タブレットの導入、サテライトオフィスの設置を行い、対象職員も育児・介護中の職員から全職員に拡大しました。

広島県「県庁内での「働き方改革」を進めています!」(PDF形式)

広島市役所<在宅勤務>

テレワークの継続的な実施により家庭生活の充実や業務効率の改善が見込まれること」もしくは「急を要する子の看護等に対応するため、テレワーク実施の必要性があること」を要件に、職員の在宅勤務を認めています。通信機器は市から貸与されますが、通信環境の整備や通信費用は職員本人の負担となります。

広島市ホームページ「広島市職員のテレワーク(在宅勤務)について」

 

6.まとめ

これまで育児や介護と仕事の両立が難しく、希望する仕事に就けなかった人、正社員として働くことが難しかった人も、今後テレワークが導入されることで、働く場所や時間の制限が緩和され、多様な働き方が選択できるようになります。共働き家庭が年々増加していることからも、テレワークのニーズは今度ますます高まっていくと思われます。

現状では一部の大手企業が導入を始めたばかりで、地方企業で導入されるようになるにはもうしばらく時間が必要ですが、年々加速する労働力不足を解消をするためには、テレワークは企業にとってもメリットの大きな制度と言えます。テレワークの全国的な導入を早期に実現するために、国と企業により早急な環境整備が行われることが期待されます。

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