長時間労働を改善できる?36協定の指導強化で変わる働き方

仕事の現場における大きな問題点として注目されているのが、長時間労働です。この点について、政府は36協定未締結企業に対する指導の強化を決定しました。これが実現することで、労働環境はどう変わっていくのでしょうか。

 

目次

1.労働基準法における労働時間のルールとは?

36協定は、労働時間に関する決まりです。まず、労働時間についてどのようなルールが定められているのか見てみましょう。

労働基準法では、労働者を保護するために、法定労働時間を定めています。これによれば、使用者は被用者を原則として1週間あたり40時間、1日8時間を超えて労働させてはいけません。特例措置対象事業場にあたる場合でも、44時間を超えて働かせることはできない決まりになっています。

また、休日についても法定休日というものが定められており、1週間に1日は休日を与えなければなりません。 この法定労働時間、法定休日を超えて労働したぶんは、時間外労働となります。時間外労働に対しては、割増賃金の支払い義務が生じます。例えば、時間外労働をさせた場合は通常の賃金の25%以上増しで、休日労働をさせた場合には35%以上増しの賃金を支払わなければならないというのが現行法の決まりです。

また、時間外労働をさせる場合には、事前に時間外労働ができることを明記した契約を労使間で締結して、労働基準監督署に届けなければなりません。これが36協定です。

 

2. 36(サブロク)協定とはどんなもの?

36協定とは、使用者が被用者に法定時間外労働、法定休日労働をさせる場合に守らなければならないルールです。労働者に法定外の労働をさせる場合には、使用者は前もって「時間外労働・休日労働に関する協定」を労働基準監督署に届けなければなりません。

なぜ「36協定」と呼ばれているかというと、労働基準法36条に規定されているルールだからです。法定時間外の労働をする際には、労使が協議して合意して、それを文書化し、届け出たうえでなければならないというのが36協定です。

さらに、36協定では時間外労働の上限を定めています。時間外労働ができる上限は、原則として月に45時間までです。36協定を締結・届出しないで時間外労働をさせたり、上限を超えて労働させたりした場合には、違法となり罰則も設けられています。しかし、一時的に上限を超えた労働が必要になる場合には、特別条項付き36協定を結べば、例外的に限度時間を超えた時間外労働が可能です。

 

3.36協定未締結企業への指導強化の背景にあるもの

労働現場でのさまざまな問題点が指摘されている中、政府主導で「働き方改革」が行われています。この流れの中で出てきているのが労働基準法改正です。改正は、労働基準法で時間外労働の上限を定めるなどして法的拘束力を持たせ、時間外労働の規制を一層強化する狙いがあります。

このような改革の第一歩として、2018年度からまず36協定について強化することが決定されました。中小企業では、いまだに36協定を締結・届出しないまま残業をさせている企業が多いというのが実情です。厚生労働省のあるデータによれば、36協定の未届け事業所は全国170万事業所にも及びます。そこで、社会保険労務士などの民間企業に委託をして、36協定の未届け企業に対する取り締まり、指導を実行していくことが決まったのです。

 

4.指導強化で期待できること

36協定の指導強化の目的は、違法な長時間労働をなくし、労働者を守ることにあります。せっかく36協定という制度を設けても、制度を周知徹底しなければ意味がありません。実際に、36協定をそもそも締結していなかったり、締結していても形骸化している例が非常に多く、時間外労働はいまだ労働者に大きな負担となっています。また、特別条項付き36協定によって、事実上時間外労働の上限がなくなってしまっているという現状もあります。

36協定未締結企業への指導強化がなされれば、違法な時間外労働という状態を企業に再認識させることが可能です。また、指導強化が功を奏すれば、労働基準法改正への大きな第一歩になるでしょう。改正内容によれば、時間外労働の規制は現在よりも厳しいものになります。たとえば、特別条項付き36協定のような協定を結んでも、時間外労働できる上限は年に720時間までです。それを超える残業は違反となり、企業は罰則(6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金)の対象となります。また、割増賃金についても、現在は大企業だけに適用されている基本給の5割増というルールが、中小企業へも適用されます。

このように時間外労働への規制が厳しくなれば、労働環境が改善されます。きちんと休養を取ることができるので、体調不良になったり過労死したりする人が減るでしょう。生産性が上がりますし、プライベートな時間も大切にできるようになります。短時間でも仕事ができるようになれば、女性や高齢者なども働きやすくなると予想されます。

 

5.岡山や広島で働く人にとってのメリット

全く残業がないという業種は、日本ではおそらくないでしょう。特に、残業率が高いのは、急な業務が入ることが多い業種や、社外とのやり取りが多い業種、チームワークで仕事をすることが多い業種などです。企業が時間外労働に対する意識を上げないかぎり、いわゆるサービス残業が減ることはないでしょう。

岡山県は、全国的に見ても時間外労働が非常に多いといわれている県です。国と岡山県のデータによれば、岡山県の年間総実労働時間は全国平均よりも102時間も多いという結果も出ています。都道府県別データでも、過去10年間ワースト10入りしており、残業時間数も出勤日数も、他県よりも多い傾向があります。こうした点を見ると、岡山県は長時間労働を是正する必要性が高い県であるといえるでしょう。広島も岡山県ほどではないものの、残業が多く時間外給が少ない点では、ワースト10に近い位置にいたこともあります。

36協定未締結企業への指導が強化され、労働基準法改正が実施されれば、このような労働環境にもよい影響を与えるはすです。違法な時間外労働が減り、休暇・休日をしっかり取って、健やかに働ける環境が整っていくことが期待されます。

 

6.36協定の指導強化で働きやすい社会を実現

36協定は、違法な残業を規制する制度として大きな注目を集めました。しかし、実際には制度を知らない企業も多く、実施していても守られていないなど、制度の実効性を疑問視する声が多いのが現状です。
今後は、労働基準法の改正に向けて、36協定未締結企業への指導強化が行われます。これにより、多くの企業が時間外労働について改めて考え、取り組むようになれば、今度こそ労働環境の改善につながるかもしれません。岡山県や広島県の労働環境も改善されていくことが予想されます。今後の成り行きを見守っていきましょう。

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