AI採用は地方転職をどう変えるのか?メリット・デメリットと転職時の対策

近年、大手企業を中心に新しい採用手法として「AI」の活用が広がっています。「AI採用」と言われるこの手法は、私たちの就職・転職にどのような影響を与えるのでしょうか。
本記事では、AI採用の背景とメリット・デメリット、地方転職市場への影響、AI採用を行う企業に転職するときの対策について解説します。

 

目次

1.AI採用とはどんな手法なの?

AI採用とは、採用活動の一部を人工知能(AI)によって行うことです。具体的には、企業と求職者のマッチング、求職者へのオファー、書類選考、面接、配属決定など、求人応募から採用に至るまでの幅広い業務を人間に代わって行うことが可能です。
これまで、企業の採用活動は一つ一つの工程を人間の手で行ってきました。そのため、採用活動には多くの時間と手間がかかり、人手不足の企業では採用活動自体が困難なケースもありました。しかし、AIを導入することで、企業はたくさんの応募者の中から自社にマッチする人材を簡単に見つけ出したり、選考業務を効率化することが可能になります。

例えば、アメリカのIBMが開発したAI「ワトソン」は、応募者のエントリーシートの自由回答に対する記述を統一された基準で判断し、合格基準を満たすものを選定します。そして、その結果をもとに、人事担当者が合否の最終判断を行います。このように選考の一部にAIを活用することで、人間が確認作業に充てる時間を約75%削減することができるようになりました。

他にも、AIを導入することで次のような内容が実現可能です。

企業からのオファー

年齢・性別・学歴・職歴・志望動機等の情報をAIが分析し、条件にヒットした求職者を割り出します。また、SNSの投稿などインターネット上の情報から、転職の可能性が高い人を割り出すことも可能です。

転職サイトでのマッチング

会員登録情報から、求職者の希望や属性にマッチする企業を紹介します。

書類選考

履歴書・職務経歴書を分析し、一定の基準でふるいにかけます。現在、企業への導入が最も多いのがこのシステムです。求職者のスキルや経験だけでなく、人物像(熱意、特性、性格等)まで判断できます。

面接

音声データの質問に対し、求職者が回答した内容を分析します。24時間、365日、世界中で利用できるサービスも展開されています。

配属決定

書類選考や面接から得たデータをもとに、本人の能力だけでなく人物像も考慮して入社後の配属先を提案します。

人材データの蓄積

採用後の人材活用・育成に活用できます。また、採用実績データを蓄積することで、今後の採用に役立てることができます。

 

2.AI採用が注目されている背景と導入の現状

AI採用が注目されている背景には、深刻な労働力不足により、採用活動に苦戦する企業が増えているという現状があります。ここ数年、全国的に売り手市場が続き、企業は優秀な人材の確保が難しくなっています。

求人を出してもなかなか応募がない。
採用してもミスマッチが多くすぐに辞めてしまう。
採用にかけられる人員と費用が少ない。

このような状況下で即戦力となる人材を採用するためには、いかにして応募者を集めるか、選考を効率化するか、自社にマッチする人材を見極めるかが重要なポイントとなり、AIはそのための有効な手段として注目されています。

AI導入の現状としては、まだ一部の企業が導入を始めたばかりで、地方中小企業で活用されるようになるまでは、もうしばらく時間がかかると予想されます。また、AIを導入している企業の活用状況については、応募から採用まで選考のすべてをAIが行うわけではなく、書類選考はAIを活用して応募者を絞り込み、面接以降は人間が行うケースが多く、あくまでAIは採用活動の補助的な役割として活用されているようです。

 

3.AI採用のメリット・デメリット

AI採用を行うことで、求職者・企業の双方にどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか?

メリット

<求職者>
・パソコンやスマートフォンで受験できるため、移動にかかる時間や受験費用がかからない。
・人事担当者の主観が入らないため、基準が公平公正である。
・選考を受ける場所や時間が選べる。自宅受験が可能。

<企業>
・人事担当者が応募者一人ひとりに向き合える時間が増える。
・入社後のミスマッチを防ぐことができる。
・採用コストを削減できる。
・選考を重ねるたびに求職者のデータが蓄積され、AIの判断の精度が高まる。

デメリット

<求職者>
・人事担当者の顔が見えない。
・AIに選考されることに不安・抵抗を感じる人もいる。

<企業>
・求職者の顔が見えない。
・AIに出来ることは限られているため、人間が最終確認を行う必要がある。
・導入コストがかかる。

AI採用のメリットは、書類選考が効率化されることで、面接で人事担当者が求職者に向き合う時間が十分にとれるようになることや、AIは人間のような評価の偏り(主観、好み、甘い辛い)が無いため合否判断が公平公正であること、蓄積された過去の採用データから本人の適性を的確に判断し、採用後のミスマッチを防ぐことができることなどが挙げられます。また、インターネット環境があれば自宅受験が可能となり、遠方からの受験する場合も費用や時間がかからないため、企業・求職者双方のコスト削減につながります。

その反面、デメリットもあります。それは、AI採用はまだ一般的ではないため、AIに合否を判断されることに抵抗を感じる求職者や、選考中に双方の顔が見えないことに不安を感じるという人事担当者・求職者も多くいるということです。

しかし、これらのデメリットは、AI採用がまだ世の中に浸透しておらず、実績がないために危惧されているという背景もあるため、今後は払拭されていく可能性も大いにあります。そして、それ以上に得られるメリットの方が大きいことから、AI採用はこれからますます普及していくと予想されます。

 

4.地方の転職市場への影響は?

現状では、AI採用は大手企業の手法と思われがちですが、実は、採用に人手や費用をかけられない地方の中小企業にこそ、AI活用が今後の人材採用のカギとなっていくことが予想されます。

メリットにも記載したように、選考に際し「移動にかかる時間や受験費用がかからない」ことは、優秀な人材の確保においてとても重要なポイントです。地元採用がメインの企業も、AI採用を導入することで、全国からUIJターンを希望する優秀な人材を募集できるようになります。このことは、働きながら転職活動を行う求職者にとっても大きなメリットとなります。わざわざ遠方の企業に出向かなくても選考が受けられるため、働きながらでもじっくりと転職活動に取り組むことができます。

このような理由から、今後、地方の中小企業でもAI採用が増えていき、UIJターン転職がより活発に行われるようになるのではないかと予想されます。

実際に、一部の地方中小企業ではAI採用が行われています。その事例として、広島県福山市の鶏卵大手企業「株式会社アキタ」をご紹介します。

アキタは日本初の試みとして、2019年新卒採用の全応募者に対し、AI面接サービス「SHaiN」を使用した採用面接を実施しています。導入に至った背景には、売り手市場の影響で地元採用に苦戦していたという状況があり、遠方の畜産系大学の学生を積極採用するために、面接の場所や時間を選ばないAI面接を本格導入したそうです。
まず、2018年新卒採用で試験導入したところ、全国からの応募が増え、面接大幅な採用効果が得られたとのこと。また、一次面接をAIに任せ、最終面接を役員が担当することで、求職者とじっくり向き合う時間を確保でき、その結果、自社の求める人材を採用することができたそうです。

この事例からも分かるように、就職・転職において、選考の時間や場所、移動コストの制約が無くなることは、求職者が企業の選択肢を広げるうえで重要なポイントとなり、人材不足に悩む地方中小企業にとっても、AI導入は企業存続のために今後必要不可欠なものとなっていくことが予想されます。

<参考>株式会社アキタ「日本初!全応募者に対して AI 面接を実施 ~2019年卒新卒採用の一次選考試験にて導入~」(2018年2月27日)

 

5.AI採用を導入する企業を受けるにはどんな対策が必要?

結論から言うと、AI採用は通常の選考と変わず、「AI採用のための対策」というものは存在しません。
AIは選考の効率化を図ることはもちろん、求職者の資質や特性を見出すために使用されます。現状では、最終面接や合否判断など重要なことは人間によって行われており、AIによる判断結果は企業への適性を判断するための参考材料として活用されます。

AI採用を行う企業で採用試験を受けるときは、通常の選考と同様、志望する業界・職種の知識やスキル・経験を磨くことや、自身の強み・弱みを理解しておくこと、今後のキャリアや志望理由などの考えをきちんとまとめておくことが重要です。転職活動ではつい自分を良く見せようと、飾ったり偽ったりする場面もあるかもしれません。逆を言えば、AIだからこそそこを見抜いてしまうこともあるので、そこは注意が必要です。

 

6.まとめ

AI採用は、企業と転職者を結ぶ重要な架け橋として、今後、地方においても導入する企業が増えることが予想されます。もしかしたら、あなたもこれからAI採用を導入している企業の採用試験を受けることがあるかもしれません。
しかし、どれだけAIが普及しても、AIはあくまで採用活動の補助として活用されるものであり、最終的には「人」が「人」をジャッジすることが必要となります。
もしAI採用を受けることになったときに求職者の心構えとして大切なのは、素直で誠実な気持ちを持って選考を受けることです。AI採用だからという理由で変に気構えることなく、企業にありのままの自分を伝えられるよう入念に準備をして選考に挑みましょう。

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