転職するのに必要な手続きは?(2)~社会保険・年金・税金・積立・住宅ローン編~

前回の記事「転職するのに必要な手続きは?(1)~書類・物品編~」では、退職時に必要な会社との書類や物品のやりとりについて解説しました。
今回は、社会保険・税金・積立・持ち株・住宅ローンなど、「お金」に関する手続きの方法を説明していきます。

面倒くさくて、後回しにしたり、敬遠しがちですが、きちんと手続きをしておかないと、必要な社会保障が受けられなくなったり、今まで積み立てたお金が減ってしまったりと、後々トラブルになる可能性があります。そうならないためにも、手続きの内容を事前に確認しておきましょう。

 

目次

1.転職時にしなければならない手続きは?

転職が決まると会社や公的機関などに様々な手続きを行わなければなりません。
うっかり漏れがあれば、転職後に困ることになりますので、やることをリストアップして漏れのないように準備を進めましょう。

(1)税金に関する手続き

1.所得税

入社後、年末調整までに、前職の「源泉徴収票」と「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出します。

2.住民税

前職の住民税の支払い方法が、本人の自己申告による「普通徴収」なのか、給与から天引きされる「特別徴収」なのかで、提出する書類が変わります。会社員の場合は、一般的に特別徴収で納税している人が多いでしょう。

転職先が決まっている場合は、残りの住民税を普通徴収または一括徴収にするか、転職先でも継続して特別徴収を行うかを選択できます。

・退職日が1月1日~4月30日
退職月から5月分までが一括徴収されます。但し、退職時の給料や退職金が納付額より少ない場合は、不足分を本人が普通徴収で自治体に納付しなければなりません。

・退職日が5月1日~5月31日

退職時の給与や退職金から天引きされます。

・退職日が6月1日~12月31日

翌年5月までの納付方法を、一括徴収または普通徴収から選択できます。

はじめから一括徴収を希望しない場合は、退職日を6月1日から12月31日の間にし、退職時に会社に普通徴収への切り替えを希望する旨を伝える方法があります。

<転職先でも特別徴収の継続を希望する場合>
前職の会社に、転職先でも特別徴収の継続を希望する旨を伝えます。手続きは、前職の会社が「給与支払報告・特別徴収にかかる給与所得者移動届出書」を作成し、自治体に提出します。基本的に本人が行う事務手続きはありません。但しこの場合、転職することや転職先の会社の詳細を前職の会社に伝える必要があるため、注意が必要です。

<普通徴収から転職先で特別徴収に切り替える場合>
前職の退職時に特別徴収から普通徴収に切り替えていたものを、転職先で再び特別徴収に切り替える場合、手続きは転職先の会社が行います。本人は普通徴収で納めた金額と期間が分かるもの(住民税の納付書)を転職先に提出します。

 

(2)社会保険に関する手続き

社会保険には、「雇用保険」「健康保険」「年金保険(厚生年金)」の3種類があります。
基本的に、社会保険に関する手続きは「転職先の会社」が手続きを行います。転職する本人は入社までに必要書類を揃えて置く必要があります。

1.雇用保険

雇用保険に加入するためには、次の要件を満たす必要があります。

(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること
(2)31日以上引き続き雇用されることが見込まれること

入社後、「雇用保険被保険者証」を提出します。この書類は雇用保険に加入した際に発行される証明書で、前職の退職時に会社から渡されます。(会社によっては入社後すぐに渡される場合もあります。)前職の会社名などが書かれている「雇用保険被保険者資格取得等確認通知書」と「雇用保険被保険者証」が一緒になっていますが、転職先に前職の情報を知られたくない場合は、切り離して「雇用保険被保険者証」だけ提出しても問題ありません。

2.健康保険

扶養家族がいる場合は「健康保険被扶養者(異動)届」を、被扶養配偶者がいる場合は「国民年金第3号被保険者届」を提出します。この書類は転職先の会社から渡されます。
※転職先が決まっていない場合は、退職日から14日以内に、居住地の市区町村の役所窓口で「国民健康保険」への切り替え手続きが必要となります。家族の扶養に入る場合は、配偶者の勤務先で手続きを行います。

3.年金保険(厚生年金)

入社後に「年金手帳」を提出します。
※転職先が決まっていない場合は、退職日から14日以内に、居住地の市区町村の役所窓口で「国民年金」への切り替え手続きが必要となります。

 

(3)積立制度に関する手続き

1.財形貯蓄

転職先に財形貯蓄制度があるか無いかで、手続きの方法が異なります。転職先でも制度が利用できる場合は、積立継続手続きを行うことができます。
制度の利用を辞めたい場合、制度の利用ができない場合は、会社または本人による解約手続きが必要です。但し、財形年金貯蓄と財形住宅貯蓄は、解約後、一定期間経過後から非課税扱いになります。

2.企業型確定拠出年金(企業型DC)

企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)は、原則解約ができません。そのため、転職先に企業型DCがあるか無いかで、手続きの方法が異なります。

<転職先の企業で制度が利用できる場合>
転職先の企業型DCへの移管手続きを行います。転職先の担当者に移管を希望する旨を伝えましょう。転職先の企業型DCに加入する場合は、一旦いままでの資産を現金化し、転職先で取り扱う商品を選び直す必要があります。

<転職先の企業で制度が利用できない場合>
個人型確定拠出年金(iDeCo)への移管手続きを行うか、掛け金を拠出せずに、積み立てた資産を運用する「運用指図者」になるかを選択します。また、一定の条件を満たせば脱退が可能です。

【豆知識】企業型DCを放置すると損するって本当?!
前職の会社に3年以上勤務していた場合は、積立金を全額移し替えることができます。3年未満であれば、掛け金の一部、もしくは全額が引かれる可能性があるため、前職に制度の規約を確認しましょう。
移管手続きは退職日の翌日から6ヶ月以内という期限が設けられています。万一、期間内に手続きを行わなかった場合、年金資金は自動的に「国民年金基金連合会」の預かり口座に移管されるので注意が必要です。

3.厚生年金基金・確定給付企業年金

転職先に企業年金制度(厚生年金基金・確定給付企業年金・企業型DC)などがある場合、ポータビリティ制度を利用することで、年金資金の移管が可能です。この場合も、企業型DCと同様に脱退一時金を受け取り、転職先の年金制度に加入し直す必要があります。

4.退職金積立

退職金制度には「一時金制度」と「年金制度」があります。自分の会社に退職金制度があるかどうかは、人事や総務の担当者に確認してみましょう。
給与から天引きで退職金を積み立てている「一時金制度」の場合は、退職時に一括で支払われます。
厚生年金基金、確定給付企業年金、企業型確定拠出年金といった「年金制度」の場合は、前述した【確定拠出年金】【厚生年金基金・確定給付企業年金】の項目をご覧ください。

5.持ち株

退職後に売却して現金化するか、自分名義に変更して所有するか選択できます。

6.社内預金

解約請求を行いましょう。会社は、従業員の解約請求から7日以内に返金しなければならないと法律で定められています。

 

(4)住宅ローンに関する手続き

金融機関に勤務先が変更になった旨を届け出ます。その他にも、住宅ローンの契約時に届出た内容に変更がある場合は、金融機関が定めた所定の手続きを行います。転職したことによる収入の減少については特に問題ありません。そのことにより融資の見直しが行われることもありません。

但し、住宅ローン返済中に転職した場合、他の金融機関での住宅ローンの借り換えはすぐにはできなくなる可能性があります。住宅ローンの借り入れ審査では、勤務年数や収入の条件がありますので、勤務年数が短いことで借り入れを断られるケースが多いです。

また、住宅ローンの審査中の転職も要注意です。仮審査を通過したあとに、金融機関に提出した自己条件に変更があった場合、本審査で否認される可能性が高くなります。

住宅ローン控除については転職しても引き続き受けられます。但し、控除を受けるためには「本人もしくは家族がその家屋に居住していること」が条件になっています。転職による引っ越しにより、控除の対象となる家屋に誰も住まなくなってしまうと、控除が受けられなくなるので要注意です。(この場合の家族とは「生計を共にする親族」を指します。)

 

2.まとめ

中小企業や小規模企業では、担当者に専門知識が無いために、適切な対応をしてもらえないケースがあります。そのため、自分に知識が無いと、会社からは何も連絡をもらえず、必要な手続きがなされないということも…。
そのような問題を避けるためにも、会社が動いてくれない場合は、自分で会社や対象機関に問い合わせるなど、アクションを起こすことをおすすめします。

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