ヨーロッパは共働きが常識?!女性のキャリア意識と働き方を比較

日本では、少子高齢化に伴う労働力不足の対策として、女性活躍推進が進められています。一方で、世界経済フォーラムが発表した、2017年の各国の社会進出における男女格差(ジェンダーギャップ指数)の調査結果では、日本は144か国中114位という結果が出ており、日本は世界の先進国と比べて、女性の社会進出に遅れをとっていることが分かります。
【参考】内閣府男女共同参画局「共同参画 2018年1月号」(最終閲覧2018年11月5日)

そこで今回は、世界と日本の女性のキャリア意識と労働環境の違い、そして、岡山・広島の女性が活躍している企業の取り組みについてご紹介します。

 

1.日本における女性のキャリアへの意識と労働状況

これまで日本では、「キャリア」と言えば「学歴」や「職歴」のことを指していました。しかし近年は、それらに限定せず、「キャリア=人生のすべて」という考え方が広まってきています。
日本人のキャリア形成において、男性と女性で異なる点は、女性は結婚、妊娠、出産、育児、家事、介護などがキャリアに大きく影響することです。現に、2017年に発表された「男女共同参画白書」によると、「女性の年齢階級別就業率」は子育て世代である30代女性の就業率が減少しています。
その反面、「女性が職業を持つことへ対する意識の変化」については、「子供ができても、ずっと職業を続ける方がよい」と回答した人の割合が年々増加しています。

【出典】内閣府「男女共同参画白書 平成29年版」(最終閲覧2018年11月5日)

これらのデータから、「結婚や出産などでライフスタイルが変化しても働き続けたい」と考える女性は増加しているにも関わらず、それを実現できる環境が整っていないというギャップが生じていることが分かります。政府は女性活躍推進に向けて様々な施策を行っていますが、社会全体としては女性が働くことへの意識はまだまだ低く、女性が働きやすい環境づくりに取り組む企業もごく一部という状況です。

 

2.日本の女性活躍推進に関する制度

日本では女性活躍推進を図るために、女性の雇用に関する様々な法律や制度が設けられています。そのうち、代表的なものをご紹介します。

(1)男女雇用機会均等法

男女雇用機会均等法では、募集・採用、配置・昇進等の雇用管理の各ステージにおける性別を理由とする差別の禁止婚姻、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等が定められています。また、平成29年1月1日からは、上司・同僚からの職場における妊娠・出産等に関するハラスメント防止対策の措置が義務付けられました。
【引用】厚生労働省「男女雇用機会均等法のあらまし」(最終閲覧2018年11月8日)

(2)女性活躍推進法

働く場面で活躍したいという希望を持つすべての女性が、その個性と能力を十分に発揮できる社会を実現するために、女性の活躍推進に向けた数値目標を盛り込んだ行動計画の策定・公表や、女性の職業選択に資する情報の公表が事業主に義務付けられました。
【引用】内閣府男女共同参画局「女性活躍推進法「見える化」サイト」(最終閲覧2018年11月8日)

(3)育児・介護休業法

妊娠・出産・育児期や家族の介護が必要な時期に、男女ともに離職することなく働き続けることができるよう、仕事と家庭が両立できる社会の実現を目指し、雇用環境を整備する。
1.介護離職を防止し、仕事と介護の両立を可能とするための制度の整備
2.多様な家族形態・雇用形態に対応した育児期の両立支援制度等の整備
3.妊娠・出産・育児休業・介護休業をしながら継続就業しようとする男女労働者の就業環境の整備
【引用】厚生労働省「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」(最終閲覧2018年11月8日)

このように、国として法律や制度の整備は進んでいますが、実際の社会では、女性の働く環境はまだまだ厳しい状況にあります。その理由を、女性の社会進出が進んでいる海外の例と比較して考えていきたいと思います。

 

3.ヨーロッパのキャリア意識と企業の採用基準

海外と日本では、男女のキャリアへの意識や企業の採用基準が異なります。
ここでは、世界的に見ても女性の社会進出が進んでいるヨーロッパを例に、日本との違いを比較していきます。

(1)女性の労働状況

下の表は、独立行政法人労働政策研究・研修機構が発行した「データブック国際労働比較2017」による、15歳~64歳の女性の就業率ランキングです。
この結果を見ると、ヨーロッパの国々が上位にランクインしており、その中でも北欧の女性の就業率が特に高いことが分かります。

1 スウェーデン 74.0%
2 ノルウェー 73.0%
3 デンマーク 70.4%
4 ドイツ 69.9%
5 カナダ 69.4%
6 ニュージーランド 69.2%
7 オランダ 69.2%
8 イギリス 68.6%
9 フィンランド 67.7%
10 オーストラリア 66.8%
11 日本 64.6%
12 ロシア 64.6%
13 アメリカ 63.4%
14 EU-15 61.5%
15 フランス 60.6%
16 ベルギー 58.0%
17 韓国 55.7%
18 スペイン 53.4%
19 イタリア 47.8%
20 ギリシャ 42.5%

【参考】独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2017」(最終閲覧2018年11月14日)

(2)キャリア意識の違い

ヨーロッパの女性の社会進出が進んでいる理由の1つとして、まず、キャリア意識が高いことが挙げられます。
ヨーロッパの人々は、幼少期からキャリア教育を受けて育ちます。そして、大学進学のときには将来のキャリアを見据えて専攻を選び、勉学に励みます。学生時代には長期インターンシップに参加し、実戦で経験を積むのが一般的です。また、日本のように定年まで1つの職に就き続けることは珍しく、キャリアアップのための転職が当たり前に行われています。

(3)企業の採用基準の違い

もう1つの理由として、企業の採用基準の違いが挙げられます。ヨーロッパは実力主義社会のため、企業の採用では、日本のように「新卒採用」や「既卒採用」という枠組みがなく、「即戦力」であることが求められます。そのため、採用基準は、求職者の志望動機や自己PRよりも「学歴」や「職歴」であり、「入社して何ができるのか」を重視します。採用条件に性別や年齢の制限もありません。ただし、日本と同様に定年制はあります。(例:スウェーデン67歳、ノルウェー67歳、デンマーク65歳、ドイツ65歳)
雇用形態は、日本と同様に正社員と非正規社員があります。賃金については、法律により雇用形態での差別を禁じられていることから「同一労働同一賃金制」が導入されています。男女平等が当たり前の社会のため、「女性だから」「子育て中だから」といった理由で待遇を差別されることはありません。

【関連記事】新卒採用は日本独自の文化?世界の就活事情を比較

 

4.北欧における女性の労働環境

前項でお伝えしたように、ヨーロッパでは女性自身のキャリア意識が高いこと、ジェンダーフリー社会であることが、女性活躍が進んでいる大きな要因になっています。ちなみに、女性の就業率ランキングで上位にランクインした北欧の国々は、特に男女平等の意識が高く、社会保障が手厚いことで知られています。
ここでは、スウェーデンとノルウェーの例をご紹介します。

(1)スウェーデンの場合

女性就業率1位となったスウェーデンは、子育てしやすい国として有名な国です。共働きが当たり前の社会で、結婚・出産後も仕事を続ける女性がほとんどです。女性活躍が進んでいる背景には、国が政策として「ファミリー・フレンドリー」を掲げており、子育て世代のサポートが充実しているという現状があります。

<制度の一部>
・育休は両親合わせて480日取得可能。(事実婚も含む)
・育休期間の390日までは給与の80%を支給。
・希望者のすべてが保育園に入園できる(待機児童ゼロ)
・子どもの看病で仕事を休んだ場合、給与の80%を支給。(祖父母も対象。年間120日まで)
・子どもが8歳になるまで短時間労働制度が利用できる。
・同一労働同一賃金のため、正規・非正規雇用に関わらず給与水準は同等。

スウェーデンの男性の育休取得率は、なんと約90%とのこと。育休中だけでなく、職場復帰してからの給与保障や労働環境の保障も手厚いため、男女ともに安心して育児と仕事を両立することができます。また、男性も女性も家事・育児を平等に行うため、女性だけに負担がかかるということはありません。

(2)ノルウェーの場合

国連による2018年の「世界幸福度ランキング」で2位にランクインしたノルウェーは、女性が働きやすい労働環境の整備が進んでいます。株式会社ワークスアプリケーションズによる「日本・ノルウェーにおけるオフィスワーカーの「働き方」に関する意識調査」では、次のような結果が出ています。

・ノルウェーでは82%がフルフレックスまたはフレックス制度を導入と回答
・「リモートワークが認められている」ノルウェー78%、日本21%
【引用】株式会社ワークスアプリケーションズ「【調査報告】生産性第2位のノルウェーと日本における「働き方」に関する意識調査を実施」(最終閲覧2018年11月7日)

このように、国全体でフレックス制度とリモートワークの導入が進んでいるため、子育て中の女性も柔軟に働ける環境が整備されています。

また、仕事において「生産性」を重視するノルウェーでは、長時間労働は評価されません。いかにして短時間で成果を出すかを考えて働き、定時になると仕事を切り上げて帰宅します。2017年に調査された「OECD加盟国の時間あたり労働生産性」では、ノルウェーは35か国中3位という結果が出ています。このように、「時間内に成果を上げて、プライベートの時間を大切にする。」このような国民性も、女性活躍が進んでいる理由の一つになっていると言えます。

【参考】公益財団法人 日本生産性本部「労働生産性の国際比較2017年版」(最終閲覧2018年11月8日)

その他にも、働く子育て世代をサポートするさまざまな制度があります。

<制度の一部>
・父親の育休取得が義務(両親合わせて最大54週、うち父親は10週を取得)
産前3週も含め育休期間が49週の場合、給与の100%を支給。59週を選択すると80%を支給。
・育休を取得した社員が不利益になる処分は法律で禁止
・希望者のすべてが保育園に入園できる(待機児童ゼロ)

ご紹介した2つの国の例からも分かるように、北欧の女性が活躍している背景には、国を上げての手厚い育児サポート体制と、男性の家事・育児の参加率が大きく影響しています。

ちなみに、日本の話をすると、6歳未満の子どもを持つ若い世帯の夫の家事・育児への参加時間は、日本は主要先進国の中でも最下位という結果が出ています。

【出典】内閣府「男女共同参画白書 平成29年版」(最終閲覧2018年11月5日)

その背景には、日本の男性は残業や長時間労働により家庭で過ごす時間が少ないこと、育休を取得しにくい環境であるという現状があります。また、保育園の待機児童問題も深刻な社会問題となっています。

 

5.岡山・広島の企業における女性活躍推進の取り組み

ご紹介したように、北欧の国々では女性活躍推進の取り組みが進んでいます。しかし、日本でも同様の取り組みを行うためには、国として制度を拡充していく必要があり、その実現にはまだまだ時間がかかることが予想されます。
そんな中、女性労働力を確保しようと、日本各地で女性活躍推進に取り組む企業が増えてきました。
ここでは、岡山と広島の企業の事例をご紹介します。

(1)株式会社中国銀行

■所在地 岡山県
■業種 銀行業
■従業員数 4,417人(男性 2,224人、女性 2,193人)

・男性の育児休業取得促進のため、行員のイクメン・イクボスを広報誌等で周知、啓発
・多様な働き方の環境整備のため、時間単位有給休暇制度の新設
・時差出勤の柔軟化、育児のため、所定外労働免除の対象範囲拡大を実施
・女性労働者の就業継続・活躍に向けた取組として、育休復帰支援セミナーや女性リーダー育成研修の実施
・ノー残業デー・ノー残業ウィークの実施
・時間単位有給休暇の導入

厚生労働省「2018年 プラチナくるみん」認定企業

(2)株式会社シーズ

■所在地 岡山県
■業 種 人材サービス業
■従業員数 46人(男性21人、女性25人)

・短時間正社員制度(適用理由は、育児・介護・通学に限る)
・時差出勤制度(適用理由は、育児・介護・自身の健康・業務に限る)
・1時間単位の年次有給休暇
・ワークライフバランス休暇(未消化の有給休暇の活用)
・プレミアムフライデー
・法令を超えた介護休業制度及び介護休暇制度
・育児・介護休業期間中に関するサポート(社内の情報発信、定期面談、スキルアップ支援等) など

「岡山市女性が輝く男女共同参画推進事業所」認定

(3)株式会社第一ビルサービス

■所在地 広島県
■業 種 不動産業・サービス業
■従業員数 794人(男性 453人、女性 341人)

1.新人事制度の策定ならびに運用開始
・社員が自身のキャリアプランにあった職制を選択しやすいように職制転換制度を見直し。
・社員がチャレンジしやすいように昇進昇格要件を明確化。

2.採用活動
・中途管理職採用時に性別にとらわれない採用活動を実施。(女性管理職の中途採用)

3.継続就業・ワークライフバランス・福利厚生
・部署特製に応じた勤務時間制度の運用。
・定時社員(アルバイト、パート等の短時間社員)も含めた健康診断受診率向上のための取り組み。
・女性フルタイム社員全員への乳がん、子宮がん検診実施。
・本人希望に応じた定年後の就業条件に対応。(労働日数や勤務時間短縮)

厚生労働省「2018年 えるぼし認定企業」

(4)株式会社イズミ

■所在地 広島県
■業 種 卸売・小売業
■従業員数 17,917人(男性 4,381人、女性 13,536人)

・2014年に女性活躍促進を目的に「ゆめCanプロジェクト(女性活躍推進プロジェクト)」を設置
・女性管理職候補者への研修の実施
・若手女性社員へのキャリアプランセミナーの実施
・ゆめCanプロジェクトの広報誌を定期発行
・従来の再雇用制度をリ・キャリア制度に改定し再雇用要件を緩和
・半日単位での有休取得制度の導入
・休日保育への保育料補助制度の導入

厚生労働省「2017年 えるぼし認定企業」

【参考】
厚生労働省 岡山県労働局「岡山労働局管内認定企業一覧」(最終閲覧2018年11月12日)
厚生労働省 広島県労働局「広島労働局管内「えるぼし認定企業」一覧」(最終閲覧2018年11月12日)

 

6.まとめ

現在の日本では、結婚・出産・育児・介護等は女性のライフイベントと捉えられがちです。女性が働く環境は年々改善されているとはいえ、世界の先進国と比べても、まだまだ十分な環境とは言い難い状況にあります。しかし、働きたい女性のニーズに応えることは、人手不足に悩む国や企業にとってもメリットが大きいため、この貴重な戦力を活用しない手はありません。今後も女性活躍推進に向けて、国としてさらなる制度拡充と取り組みの強化が進んでいくことが期待されます。

また、女性活躍推進のためには、女性本人のキャリアに対する意識も重要です。本来、キャリアとは周りが強いるものではなく、本人の意思により選択・決定されるべきものです。女性は自らのキャリアを周りの環境に委ねるのではなく、自分がどのような人生を歩みたいのかを明確にし、それに向けて行動することが、キャリア形成のうえで重要と言えます。

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